キリスト教思想への招待
田川 建三
「イエスという男」の田川建三が、新約聖書をルーツとする(イエスをルーツとしているわけではない)キリスト教思想について解説した本。しかし単なる解説本ではなく、キリスト教思想やキリスト教史、西欧史、そしてもちろん新約聖書についての、自由なエッセイという感じの仕上がりだ。内容的にはかなり専門的なことが書いてあり、特に新約学者として「ヨハネの黙示録」をザックリと解説するくだりは痛快。こんなに楽しい、そしてわかりやすい黙示録の解説は読んだことがない。目からウロコが落ちました。そうか、そうだったのか!
全体は4部構成。扱っている内容は、創造論・教会論・救済論・終末論だが、後ろに行くにしたがってページ数が少なくなっているような気がする。体力の問題だろうか。しかしその筆は常に自由奔放、あっちに脱線しては戻り、こっちに脱線しては戻るの繰り返しだ。この脱線こそが、田川建三という著者の面白さであり、一度はまった読者を惹きつけて放さない魅力になっている。逆にこれが嫌いな人は、もう絶対にダメだろうけれど……。
読んでいて気になったのは、この本の中にやたらと「それはいずれ出す『新約聖書概論』に書きます」とか「それは『新約聖書』の注釈できちんと書くつもりです」という記述がものすごく多いこと。それまで我々は何年待てばいいのでしょうか? (10/28)