夕凪の街桜の国
こうの 史代
休刊直前の漫画アクションに掲載され、コンビニで何げなく雑誌を立ち読みしていた僕を愕然とさせた、こうの史代の「夕凪の街」が単行本化された。(「桜の国(一)」「桜の国(二)はそこから現代までをつなぐ続編だ。)ネットで単行本の発売を知り、即座に注文したのだが、送られてきてびっくり。解説を含めて103ページしかない。ペラペラなのだ。しかし中身は重い。読んでいて、やはり感動で落涙しそうになった。二度三度と繰り返し読むことで、感動はより濃密なものになっていく。
広島の原爆を生き延びた人々の物語だ。内容的には映画『父と暮せば』にも通じる世界だろうか。「夕凪の街」はヒロインの物語を途中で放り出してしまうのだが、それが続編「桜の国」にバトンタッチされ、最後には再び「夕凪の街」の冒頭に引き戻されていく。「夕凪の街」の最後に単行本のために書き下ろされた1枚の絵が、「桜の国(一)」を通り越して書き下ろしの「桜の国(二)」につながっていくすごさ。漫画でしか表現できない完成された世界だ。(10/16)